小説☆アルベル編---暗号?

ここはウォルターの館。ウォルターがゆっくりと茶を飲んでいると部下が書状を持ってやってきた。

  「ウォルター様。アルベル様より書状が届いております。」

  「うむ。」

ウォルターはやおら老眼をかけて手紙を開き、うむむと唸った。

  「………まったく。これでは、何が何やらちっともわからん。おぬしが解読してみてくれんか。」

  「はッ。ええと………今……………に……来…る??」

いつもはもうちょっとマシな、少なくとも内容はわかる程度の字を書くのだが、余程やる気がなかったのだろう。全く読めない。ウォルターは、部下が必死で解読を試みている間に紙を出し、ワザとごちゃごちゃと文字のような模様を書き、折りたたんで部下に渡した。

  「これをあやつに渡せ。」

  「はッ!」



一時間後。アルベルが怒鳴りながら部屋に入ってきた。

  「おい、じじい!一体何のつもりだこれは!」

手には先程ウォルターが書いた手紙が握られて皺くちゃになっている。

  「おお来たか。」

  「『おお、来たか。』じゃねえ!この手紙の訳のわからん模様は何だと聞いてるんだ!」

アルベルは手紙をウォルターの机に叩きつけた。

  「それには『おぬしの手紙は読めん。用があるなら、ちゃんとした字でよこすか、こちらへ来るかしろ』と書いてある。」

  「何だと!?このラクガキをどうやったら、そんな風に読めるってんだ!」

ウォルターはアルベルの書状を並べて置いた。

  「おぬしの字に似せて書いたつもりじゃがの。似ておるじゃろ?」

  「〜〜〜〜!」

そっくりだった。

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