ここはウォルターの館。ウォルターがゆっくりと茶を飲んでいると部下が書状を持ってやってきた。
「ウォルター様。アルベル様より書状が届いております。」
「うむ。」
ウォルターはやおら老眼をかけて手紙を開き、うむむと唸った。
「………まったく。これでは、何が何やらちっともわからん。おぬしが解読してみてくれんか。」
「はッ。ええと………今……………に……来…る??」
いつもはもうちょっとマシな、少なくとも内容はわかる程度の字を書くのだが、余程やる気がなかったのだろう。全く読めない。ウォルターは、部下が必死で解読を試みている間に紙を出し、ワザとごちゃごちゃと文字のような模様を書き、折りたたんで部下に渡した。
「これをあやつに渡せ。」
「はッ!」
一時間後。アルベルが怒鳴りながら部屋に入ってきた。
「おい、じじい!一体何のつもりだこれは!」
手には先程ウォルターが書いた手紙が握られて皺くちゃになっている。
「おお来たか。」
「『おお、来たか。』じゃねえ!この手紙の訳のわからん模様は何だと聞いてるんだ!」
アルベルは手紙をウォルターの机に叩きつけた。
「それには『おぬしの手紙は読めん。用があるなら、ちゃんとした字でよこすか、こちらへ来るかしろ』と書いてある。」
「何だと!?このラクガキをどうやったら、そんな風に読めるってんだ!」
ウォルターはアルベルの書状を並べて置いた。
「おぬしの字に似せて書いたつもりじゃがの。似ておるじゃろ?」
「〜〜〜〜!」
そっくりだった。