風呂でのひととき

アルベルは裸で、腰に布を掛けて座っている。

アランはその後ろでゆっくりとアルベルの艶やかな髪を櫛ですき、頭からそろそろとお湯をかけた。

お湯が滑らかに髪を伝って、まるでベールのように髪が濡れていく。

アランは香油を手に取り、アルベルの小さい頭を優しくマッサージするように洗い始めた。

あたりに心安らぐ香りが漂う。

指に絡まる濡れた髪がするすると心地良い。 アルベルも気持ちよさそうに目を瞑って、アランのされるがままになっている。




髪全体に香油を馴染ませ終えると、今度はお湯を掛けながら洗い流し、そうして丹念に洗い上げた髪を絞り、綺麗に結い上げた。

白いうなじが露になり、アランはそこに唇を這わせたい衝動に駆られた。 だが、今は我慢しながら石鹸を手に取ってたっぷりと泡立て、それをゆるりと肌に泡をのばした。

腕を撫で、肩から胸へ。

その時、アルベルがふるりと体を震わせた。

  「アラン、もっと力を入れてちゃんと洗え!」

  「はい。」

アランは少しだけ力を入れた拍子に、さり気なく手を乳首にかすめさせた。

  「ッ!」

アルベルの体がぴくっと反応したのだが、アランは何事もなかったかのように、そのまま手を背中へ滑らせ、背中から降りていき、その滑らかな手触りを楽しんだ。

ゆっくりとなだらかな快感にアルベルは目を瞑っていたが、 アランの手が股間に及ぼうとしたとき、はっと身を強張らせ、

  「そこはいい!」

と拒否してきた。セックスの時ならば何も思わず身を委ねていただろうが、アランの思惑に気付いていないアルベルにとっては、今のアランの行為はセックスではなく、ただ体を洗うというものであった。

そしてアルベルは、そこを人に洗わせるというのが気まずかったのだ。

一方、そのままセックスに持ち込もうと思っていたアランは、ここまで来てそれは無いだろうと内心思ったが、

  「はい。」

と、ここは敢えてあっさりと引き下がった。

  「では、おみ足を。」




指の間に一つ一つ丁寧に指を入れ、そして足の裏は手のひらで擦るように、じわじわと各所の性感帯を攻めていく。

やがて、ふくらはぎからするりと太ももへ。

内腿を掴んで付け根までするりと滑らせていた時、人差し指がするっとそこをかすめた。

  「!」

膝にかけていた布が半ば持ち上がりかけているのを、アランは目の端で捕らえていたが、気付かぬ振りを通し、同様に反対の足を洗い上げた。




  「さ、終わりました。後は御自分でどうぞ。」

アルベルは、ハッと夢から覚めたように目を開け、戸惑った顔をした。

  「…。」

今や触れて欲しくて堪らない部分だけが残されたのだ。

しかし、自分でいいと言ってしまった手前、今更これを何とかしろとも言えず、 アルベルは困り果てた。

アランはお湯で泡を流しながら、その様子をいつもと変わらぬ表情で密かに楽しみ、やがて、

  「差し支えなければ、私がさせて頂きますが。」

と申し出た。そのアランの顔を見て、アルベルはやっとアランの思惑に気付いた。

  「お前、企んだな!?」

  「さあ?」

とぼけて見せながら、口の端でチラッと笑うと、アルベルは、

  「このッ!」

とアランの頭をどつき、アランはイタズラがばれてしまったことに、ふふッと楽しげに笑った。

  「ここは特に時間をかけて綺麗にして差し上げます。」

  「全くお前は!何で、いつもいつも恥ずかしげもなくそういうことを…」

だが、急にアルベルは大人しくなった。

そして、アランの髪に指を埋めながら、全てをアランに委ね、アランの起こす快感の波に溺れていった。

深く…さらに深く…。