「再教育…ですか。」
カレルを一時疾風に預けるにあたっての理由付けだ。
「それなら問題ないだろう?」
アルベルはアランが広げ持っていた寝巻きに手を入れた。襟を肩に掛け、前を合わせる。それが肌蹴ぬように紐が結ばれるのを、アルベルはじっと待っている。
「では、まず礼儀作法を…」
これこそが可及的速やかに改善すべき点だと思って言ったのだったが、
「そんなことはどうでもいい。」
と、アルベルは興味を示さなかった。
「えっ!?ですが…」
驚いて手元から目を上げると、アルベルはニヤッと笑って言った。
「絵がいい!絵をさせろ。」
何やら嬉し気なアルベル。だが、アランは表情を曇らせた。
「絵ですか…」
確かにあの絵は酷かった。だからといって、療養中とはいえ勤務中に絵を描かせるなど有り得ない話だ。
そもそもアランにとって、カレルの手を借りなければならないなど、屈辱以外の何ものでもない。何とかそれを回避しようと躍起になるも、目にとまるものは一人もおらず、結局振り出しに戻ってしまっただけだった。満足に部下を集めることもできないのかと、アルベルにそう思われたのかと思うと、自分が情けなくてしかたがない。しかし、アルベルが言うなら従う他ない。
本などを与えて放置しておけばいいだろう。ところが、そう思っていたのを見透かすかのように、
「たまに様子を見に行くからな。」
と言われれば、そういうわけにはいかなくなってしまった。
アランはアルベルに続いてベッドに入りながら、心の中でため息を付いた。