小説☆カレル編短編集---一線

  「ぶっちゃけ、カレルさんとライマーさんってどうなってんですか?」

酒の席で。ライマーがいないのを見計らって、オレストがにじり寄ってきた。酒で真っ赤になった上に、えへらえへらと緩んでいる顔は、間抜けな事この上ない。オレストが何を聞きたいのか、俺はよく分かっていたが、とりあえずとぼけておいた。

  「どうって?」

オレストはヒソヒソと声をひそめた。

  「どうって、二人の関係ですよ。カ・ン・ケ・イv」

やたら嬉しげに言うオレストに加えて、周りの連中も興味津々で顔を寄せてきた。そんな連中の締りのないツラが面白いので、真面目路線はやめて、話をもっと盛り上げることにした。

  「肉体関係ってことか?」

  「やだもうッv『肉』だなんて、やらしー!」

嬉しい事に、こいつらは皆、お約束通りの反応を示してくれる。…いや、お約束以上だった。「にくにくvにくにくv」と言い合いながら、互いの身体をつんつん突つきだした。なんだそりゃ?と俺は笑いながら、

  「期待に添えなくて残念だけどな。」

と真実を教えてやった。

  「嘘だぁ?」

  「ホントー。」

これは掛け値なしの本当。だが皆なかなか信じようとしない。

  「絶対嘘だ。あんだけツーカーで、プラトニックって有り得ねーぜ。」

どうもこいつらは俺とライマーを、そういう意味でくっ付けたいらしい。まぁ、そのノリに乗ってやってもいいけど。

  「だってなぁ、ライマーってばお堅いし。」

すると、オレストが興奮しながら身を乗り出してきた。ちょっと、こいつ迫り過ぎ…。

  「んじゃッ!カレルさん的には全然オッケー!ってことっすか!?」

オレストの気迫に押されて、俺はぐいぐいと壁に追い詰められた。こいつ、ホント恋話、好きだよな〜。自分の恋愛はトントカラリの癖して。鼻息荒いオレストのどアップに耐え切れなくなった俺は、その顔面を手の平で押し返しながら、

  「…どーだろ?」

と正直な気持ちを口にした。ライマーとセックスするなんて考えた事もなかった。けど、じゃあやりたくないかってわれると、別にそういうわけでもない。考えてみりゃ、必要以上に近寄られようが、触られようが、回し飲みどころか口移しだってライマーなら平気。とにかく全てにおいて何の抵抗もないのはライマーだけだ。

友情の域は遥かに超えてる。けど、恋愛みたいに激しいもんじゃない。それなのに親子の絆よりも強く、そして深い。深い部分で常にあいつを求め、必ずどこかで繋がっていたいというこの気持ちが何なのか、未だによくわからない。

一度ヤッてみたらハッキリスッキリするのかもしれねぇが、恐らく「馬鹿か。」の一言で蹴られるだろう。

…でも内心では動揺したりして。

俺はふと沸き起こったイタズラ心に、一人にやっと笑った。

アイツが実際どんな反応を見せるか、ちょっと面白そうだ。

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