アランに自分の苦しみを告白した後、カレルは城の外へ出た。
後ろから二人の部下がついてくる。塔から飛び降りようとして以来、見張りの数が増えた。今は二人がかりでカレルに張り付き、その動向に目を光らせている。
外は雪がちらちらと舞っている。カレルは雪の城があった高台へと向かった。途中で部下の一人が城へと引き返した。防寒着を取りに行ったようだ。しかし、カレルは少しも寒さを感じなかった。身体で感じる感覚がどこか遠いところで起こっているような、何もかも分厚いオブラートで包まれたかのようにぼんやりとしている。
どうしてアランにあの話をしたのか。それはきっとアランも同じ苦しみを抱えていると思ったから。そして、話せば自分も楽になれると思ったから。
楽になれたかどうかはわからない。話してよかったかもわからない。ただひとつ、わかったことがある。
自分に何が必要か。
けれど、それは到底望めないものだ。ライマーの突き放すような目を思い出し、氷の刃で胸がえぐられるような感覚に襲われた。
(けど、キスはしてくれた!…キスはしてくれた…キスはしてくれたんだ…)
崩壊しそうになる自分に、必死で言い聞かせる。
「…。」
あと一週間。アルベルにカルサアに戻れといわれて、咄嗟に口に出た。だが、あとたった一週間ででこの状態がどうにかなるわけがない。
一体、どうすれば…。
(ライマー…。)
自分を救ってくれるとしたら、ライマーしかいない。
だが、ライマーはここにはいない。助けを求めたら来てくれるだろうが、副団長に就任したばかりで、今それどころではないのはわかっている。それに、例え来てくれたとしても、自分の要求をのんでくれるわけがない。拒絶されるに決まってる。もうあんな思いはしたくない。
と、自分を呼ぶ声がした。幻聴だと思った。何故なら、それがここにいるはずのないライマーの声だったから。
「カレル!」