小説☆カレル編〜短編集---真・オレストは見た!(1)

  (あれっ?ライマーさん、今…)

今、確かに、カレルさんの肩に触れようとしてた。そのまま触れていたら、俺は何も感じなかっただろう。別にそうしても変な場面じゃなかったから。

けど、それを思い留まった事が、ライマーさんの中にある何かを感じさせた。

それと同時に俺は自分の過ちに気付いた。人を見るときは先入観とか自分の考えとか常識とかを一切捨てて、そのまんまを見なきゃなんないのに、ライマーさんとカレルさんのラブラブっぷりを見たいが為に、勝手にその色眼鏡でもって二人を見てしまってた。

はぁあ、俺ってば…つい雰囲気にのまれちゃうんだよなぁ…。まったく、人事失格だよ…。で〜も〜、立ち直りが早いのが俺のいいところっさ〜♪

そうして注意してみると、そういうことが所々で発生していることに気付いた。

近い距離で目を覗き込んでくるカレルさんから目を逸らす時も、それが不自然にならないように気をつけていたり、抱きついてきたカレルさんを引き剥がすときも、触っても差し支えないところを探すかのように、一瞬手をさまよわせたり。気をつけてないと見逃してしまうようなほんの些細なことだから、きっと誰も気付かないだろう。

決して気のせいじゃない。これはきっと何かある。

何かって…?それは勿論、LOVEな何かで〜vv…っていう色眼鏡は外すんだった。いけない、いけない!同じ失敗はしないんだろ?オレスト!

俺は頭を白紙にして、改めて二人をじっくり観察してみた。

そもそもカレルさんのライマーさんへのスキンシップはかなり度を越えてる。隙あらばキスだってしようとする。

ただそれは、なんというかとっても『自然』なんだ。子供同士がじゃれあってる感じ。大好きな友達がいて、ふざけて抱きついてキスしようとして、

  「ちゅ〜vv」

  「やーめーろーよー!」

みたいな。それを大人になってもやるから変な目で見られるだけで。(俺もこれに惑わされてしまってたわけで;)カレルさんには『大人だから』とか『子どもだから』とか、そういう自分を制限する枠がないんだ。

対してライマーさんは、『こうあるべき』な人だ。大人とはこういうもの、社会の中でこういう態度をとるべき、という枠ががっちりあって、自分を厳しく律している。

カレルさんは何でも人を中心に考えて自分を二の次にしてしまうから、ライマーさんはいつも「まず自分の事を考えろ!」と心配するんだけれども、そういう意味では、カレルさんの方がちゃんと自分の気持ちを優先させてる。ライマーさんは世間一般常識の為に自分の気持ちを押し殺してしまっている。

ひょっとしたら、本当はカレルさんに触れたいのかもしれない。

ずっと見つめていたいのかもしれない。

心のままに抱きしめたいのかもしれない。

そうしたいならすればいい。カレルさんみたいに素直に。そうできない理由は、そうするのが大人として恥ずかしいからとか、常識的にそんなことはしないもんだとか、そういうんじゃないと思う。

カレルさんの肩に触れるのをやめたライマーさん。

何が彼をそうさせたんだろう?

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