小説☆アラアル編---約束

  (家にはあいつがいるんだろうな。)

アルベルは自分の家の外から、部屋についた明かりを見上げた。

昨日の今日で、なんだかアランと顔を合わせずらかった。今朝はバタバタと出てきてしまったので、そんな余裕はなかったが、帰ればきっと気まずい思いをする。

今日はよっぽどカルサア修練場に泊まろうかと思ったが、逃げたと思われるのも癪だ。

だいたい自分の家に帰るのに、どうしてこんなにためらう必要があるのか。

でも昨日の夜の事を思い出すと、どうしても足が前に出ない。

そうやって悩みながら、結局家の前までたどりついた。やっぱり修練場に戻ろうと踵を返しかけて、そこで立ち止まって考えこみ、ええいと意を決してノブに手をかけようとしたとき、

―――ガチャッ

と向こうからアランがドアを開けた。アルベルは驚いて、思わずアランとしっかり目を合わせてしまった。アランも同様に驚いている様子だった。

  「ああ、よかった。お帰りが遅いので、こちらからお迎えに上がろうとしていたところでした。」

アランのホッとしたような笑顔に、アルベルはギクリとした。なんだか自分の考えを見透かされていたような気がした。実際アランは、アルベルがもう帰ってこないのではないかと不安になり、無理やり連れ帰ろうと思い立ったところだったのだ。

  「フン。」

とアルベルはアランの横を通って家に入り、アランを無視して風呂場へ向かった。帰ってきたらまず風呂と決めているのだ。

風呂からあがってくると、辺りにいい匂いが漂っていて、アルベルは空腹だった事を思い出した。朝から何も食べていなかった。

部屋に入ると、テーブルに料理が置かれ2人分の食器が並べられていた。

  「勝手に色々と使わせて頂きました。…お食事になさいますか?」

  「む。」

アルベルが席につくと、アランが手際よくスープを器につぎ、アルベルに差し出した。

  「どうぞ。」

アルベルは湯気の立っているスープを一口啜って驚いた。

  (うまい!)

温かいスープが空腹の胃に染み渡るようだ。アランは他の料理もつぎわけ、アルベルの前に並べて置き、自分も食べはじめた。

  「…お前が作ったのか?」

  「はい。よく食事当番をしていましたから、一通りの料理はできます。」

どの料理も本当に美味く、アルベルは夢中で食べた。その様子をアランはほっとした表情で見ながら、アルベルに話しかけた。

  「嫌いなものなどありますか?」

  「…別に無い。」

  「では何か食べたいものは?」

  (食べたいもの?)

アルベルは真剣に考えこんだ。アルベルは一人でこの家に住むようになってから、ほとんどまともな食事をした事が無かった。面倒くさいと食べない事が多かったし、いよいよ腹が減れば、宿舎で出されるまずい食事を、ただ機械的に口に運んで飲み下していた。

父が生きていた頃は、召使が作っていたのだが、味なんて全く覚えていない。

そう言えば風邪をひいたとき、父が薬草粥を自ら作っては、いつも無理やり食わされていた。匂いからしてやばかったあの粥の味は、忘れようにも忘れられなかった。その当時は二度と風邪などひくものかと思うほどひどかったあの味も、今は懐かしく、そして、

  (もう一度、食いてえな。)

と寂しく思った。アルベルが急に食べるのをやめるほど考えこんでしまったので、アランはおずおずと声をかけてみた。

  「アルベル様?」

  「何だ?」

  「…どうかなさったのですか?」

  「別に。」

そして、アルベルは何事もなかったかのように食事を再開したので、結局返事は聞きそびれた。




久しぶりにまともな食事を摂り、満足していると食後のお茶が出された。お茶とはこんなに美味いものだったのかとしみじみ感心しながら飲んでいると、アランが食器を片付け終え、アルベルの傍に座って来た。

  「アルベル様。これから一緒に暮らしていくにあたり、決まり事、約束事をつくりたいのですが。」

  「必要ねえだろ、そんなの。どうせこんな生活すぐ終わる。」

  「いいえ!」

アランは厳しい口調で否定した。どうやら怒っているようだ。アランが怒りを露わにするのは珍しいことだった。

  「どんなにあなたが嫌だと言ったとしても、私はあなたを離すつもりはありません。…絶対に。」

アランはそれを、とてもつらそうに言った。アルベルは、

  (何でお前がそんな顔をするんだ?)

とアランを見やった。アルベルは、アランの所有物となってしまった自分の身を嘆くつもりなどなかった。自分で招いた結果だとすでに受け入れていた。アランが自分をどうしようが、人事のようにどうでもよかった。嫌なことなら、拒否するだけのことだ。

  「てめえで勝手にすりゃいいだろ。」

と言い捨てた。すると、アランはまるで結果報告でもするように、すらすらと並べ立てはじめた。

  「では、朝起きた時は、まず『おはようのキス』から始まり、出かけるときは『行ってきますのキス』、帰ってきたときは『お帰りの…」

  「ちょっと待て。何だそりゃ!?」

アルベルは持っていたカップを置いて、アランに向きなおった。

アランはじっとアルベルを見つめている。その目の真剣さにアルベルは溜息をついた。

  「…帰ってきたらまず風呂。」

  「はい。」

アランは真剣に頷いた。

  「それから俺が嫌だという事はするな。」

  「例えば?」

  「…思いついたら言う。」

  「他には?」

  「…ない。」

  「では、私の方からは、まずあなたに対して嘘をつかない、そしてあなたを裏切らない、この二つをお約束します。…私はいつも周りに対して本心を隠し、都合のいい事を言います。ですから、私があなた以外に何を言おうとも、それに惑わされないで頂きたいのです。」

  「ふん。お前が何を言おうが、俺の知った事か。」

  「場合によっては、あなたを誹謗したりすることもあるかもしれません。」

アランがわかりやすく極端な例を出すと、アルベルがすっと目を細めた。しかしアランはそう言いながら、自分にそれは出来ない事はわかっていた。アルベルの事になるついとムキになってしまい、余計な波風を立てては、いつもその後始末に奔走しているのだ。

  「あなたに対しての言葉だけが真実ですから、どうかそれを信じて下さい。」

アルベルにあらためて念を押した。

  「それから、決まり事の方ですが、どんな事があっても夜は同じベッドで一緒に寝ること。」

  「はあ!?何で一緒に寝なきゃなんねえんだ!」

と言いながら、昨晩の事を思い出していた。

  「まさか毎晩…。」

と思わず青ざめると、アランは笑って、

  「いえ。いくらなんでも、それは私も体力が持ちません。でも、あなたが望むなら話は別ですが…。」

  「誰が望むか、そんなの!」

アルベルはムキになって、思いっきり否定してきた。

  「その話は後でじっくりと。」

と置いておいた。

  「私が申し上げたいのは、昼間どんなに喧嘩をしたとしても、またどんなに顔も見たくないと思ったとしても、絶対に夜は顔を合わせ、仲直りをして、一緒に寝るということです。」

アランはただの『和解』ではなく、『心からの和解』という意味を込めて『仲直り』という言葉を使った。しかし、アルベルにはそれが幼稚に聞こえた。

  「はッ!仲直りだと?馬鹿馬鹿しい。」

  「私は本気です。これだけは絶対に譲れません。」

アランの悲痛なほど真剣な目に、アルベルは諦めた。

  「けッ!好きにしろ。」

  「約束ですよ?」

  「ああ。」

念を押してきたアランに、鬱陶しげに答えた。アランはとにかく約束を取り付けてほっとした。

  「それから先程の話に戻りますが…」

  「その話はいい。」

と言うと席を立ち、さっさと寝室へ入っていった。アランはカップを片付け、部屋の明かりを消して、その後を追った。




寝室に入るとアルベルは服を脱ぎ散らかし、こちらに背を向けて、これ以上ないくらいベッドの端ぎりぎりに入っていた。

  「…それでは夜中に落ちてしまいますよ。」

と言ってみたが無視された。

  「このことは、とても大事な話だと思うのですが…。」

  「ふん。この体はお前にくれてやったんだ、お前の気の済む様にすりゃいいだろ。」

と振り向きもせず自虐的なことを言ってきた。アランは悲しくなり、俯いた。

  「気の済むようにと言われても。本当にそうしてしまったら、あなたが壊れてしまいそうで…。」

すると急にアルベルが起きあがり、アランを睨みつけてきた。

  「何だと!?じゃあ、昨日は手加減してたって訳か!?」

  「あ、いえ、そう言うわけでは…。ただ、あなたに嫌われたくなかったので、無難な程度にしただけで…。」

その『無難な程度』という言葉にカチンと来た。つまりその程度で自分は気を失ったという事か。

  「じゃあ、本気でこい!受けて立ってやる!」

まるで闘いに挑むかのような挑発に、アランは苦笑した。

  「何をされるかわかってないでしょう?」

  「てめえッ!!初めてだと思って馬鹿にしやがって!いいから本気でかかって来い!」

  「私の欲望がどれほど深く貪欲なものか。後悔してもしりませんよ。」

  「上等だ!」

アランは思っても見なかった展開にふっと笑うと、アルベルの顎を上げ、口付けた。だが、アルベルはキスの仕方も知らないらしく、アルベルの口は閉じられたままだった。

  「唇を閉じていたら、キスができませんよ。」

口をつけたまま、くすっと挑発してみると、俄然アルベルが口を開けてきた。そこにゆっくりと舌を入れ、口腔を舌でなぶり、舌を吸い上げ、存分に堪能していった。

アランの舌が口の中に入ってくる感触に、アルベルはアランの手をつかんで身を硬くしたが、アランは構わずさらに深く口付けていった。

舌を吸われ、口腔を弄られる。その濃厚さは昨日とは比べ物にならなかった。息が上がって来るのだが、口をふさがれては思うように呼吸ができず、さらに呼吸は乱れた。アランの舌がアルベルの口内をくすぐっていく度、さざめくように何かが体を走り抜けていく。頭の芯がぼおっとなり、動悸と共に体の中心が熱くなってくるのがわかる。

アランが口を放したときには、気がつけばベッドの上に仰向けに押し倒されていた。乱れた呼吸を整え、動悸を抑えようするが、これから起こることの予測に、ますます動悸があがっていく。

  (ま、まずい。)

キスだけでここまで追い詰められてしまうとは思ってなかった。このままでは到底最後までもたない。だが自分に覆い被さってくるアランの目は妖しく光り、アルベルを捕らえて離さない。

今更、待ったとは言えなかった。

アランが再び顔を近づけてきた。アルベルが思わず顔をそむけると、アランはその耳に口付け、熱い吐息と共に、

  「愛しい人…。」

と囁いた。その熱を帯びた囁きが耳から体の中心に向かって突き抜け、ぞくりとアルベルの体を完全に変化させた。アルベルはそれに慌てて、思わず身をひねってアランの愛撫から逃れようとしたが、

  「逃げるのですか。」

と言われ、ギクッとすると同時にムカッときた。

  「だ、誰が!!」

と強がって見せたが、アルベルには勝ち目はなかった。アランはアルベルの耳を舌と唇でくすぐりながら、滑らかな肌に手を滑らせる。アルベルは横向きになり、身を硬くしている。耳から首筋に唇を這わせ、徐々に降下させながら、アルベルの肩をやさしくベッドに押し付けて仰向けにした。唇が小さな突起に到達するとアルベルはビクンと反応した。握った手の甲に噛み付き、必死に感じまいとしている。アランはそっとその手をとり、

  「そんなに噛み付いたら傷になってしまいます。」

と言いながら、ねろりと舌を這わせた。ぞくっと走る感触にアルベルは手を引っ込めた。アランはくすっと笑うと、また胸に顔を沈めた。小さな突起を舌で転がしながら、内腿から中心に向かって手をすべらせると、

  「あっ!」

アルベルはたまらず小さな悲鳴を上げた。足を閉じて逃げようとしたのを、アランは身を起こして、アルベルの脚の間に割って入ってのしかかり、体全体でアルベルを抑えつけた。そして、アルベルの耳にかぶりつき、ねっとりと舐めながら、自分自身とアルベル自身を片手で同時に包み込む。そしてゆっくりと手を動かし始めた。アルベルの喘ぎがアランの耳元で激しくなっていく。それがさらにアランの感情を昂ぶらせる。アランの手の動きは激しさを増していき、急速に2人を追い詰めていく。アルベルは夢中でアランにしがみついた。

  「はぁッ、はぁッ、う、あッ、待ッ!ぅんッ、んッ、くっっ!!」

アランが止めを刺すと、アルベルはアランの髪をつかんでのけぞり、そのまま絶頂に達した。アランも我慢しなかった。暖かい物が自分のものや手にトロリとかかる。のけぞった姿勢で快感に打ち震えているアルベルの華奢な体を強く抱きしめ、押し寄せる快感に身を振るわせた。

―――こ、こんなはずはっ!!

アルベルは荒い息をつきながら、アランの為されるがまま、あっという間に達してしまった自分に呆然とする。そして、自分がかじり付くようにアランに抱き付いてしまっていることに気が付き、慌てて腕を解いた。アランが身を起こしてアルベルの顔を覗き込むと、アルベルは頬を上気させ、ばつが悪そうに目を伏せた。その様が愛おしくてたまらず、アランは微笑んでアルベルの唇にちゅっとキスをした。

  「くそッ!笑うなッ!!」

アルベルはそう言って枕を投げつけてきた。その本気で悔しがるようすが、子供みたいに可愛いものだったので、ちょっとからかってみたくなった。

  「あなたのあまりの美しさに夢中になってしまって、あなたに抱きしめられているのに気付きませんでした。もったいないことをしました。」

  「な、何をほざいてやがる、この阿呆っ!」

と、アルベルはカァッと赤面し、アランの腕の中から逃れようとしてきた。

  (かっ、可愛いっ!!)

普段からは全く想像できないアルベルの様子に、動悸の鳴り止まぬアランの胸に更に熱いものが込み上げてくる。アルベルの体に腕を絡ませ、その滑らかな肌にゆるゆると手のひらを這わせながら

  「あなたは私を狂わせてしまう。」

と、熱に浮かされた声で耳に囁いた。そのままねっとりと舌を這わせる。そこはアルベルの弱点。

  「なっ!」

狙った通り、アルベルの体がギクリと硬直する。アランは肝心な場所をわざとはずして、そこから首筋、胸、背中、わき腹、腰を愛撫し、アルベルが反応を示す場所を丹念に探り出していった。どうやらアルベルはその場所がかなり多く、女よりも敏感に反応してくる。

  (全部見たい!触れたい!!全てを自分のものにしたい!!!)

先程の激しさとは打って変わって、今度はジワジワとせめられる。そのじれったさに、思わずはしたないことを口走ってしまいそうになる。それをぐっと飲み込み堪えようとするが、自分の声とは信じたくないほど甘い声が、吐く息と共に洩れてきてしまう。

  (くそっ!なんで、こんなに!)

自分の意思ではどうしようもないほど体が反応する。それどころか、更なる快感を求めて体が妖しくくねり出す。そんな淫らな自分に気付き、何か別の事を考えて気を紛らわせようとするが、アランは的確に敏感な所を隙なくせめて来るので、気がつくと夢中になってしまっている。

  (ああっ、もどかしいっ!)

アルベルの中心はそそり立ち、先端から涎を垂らして、アランに触れらたくてたまらないのだと主張している。アランはアルベルの立てた膝を舌でくすぐり、内腿の敏感な部分を弄りながらその様子を見下ろしている。アルベルが身悶えし喘ぐ様は実に艶かしく、その壮絶な色香に気が遠くなりそうだ。アランが一旦アルベルから体を離した。アルベルは、はっと我に返り、思わず続行を促すようにアランの方を見やる。その隙にアランはついと身をかがめ、舌先をアルベル自身の根元に当てると、そのままつぅっと先端まで舐め上げた。

  「あっ!!!」

限界まで焦らされていたところに、完全に虚を突かれた。待ちに待っていた愛撫にアルベルは声をあげ、歓喜に打ち震えた。アランは丹念にアルベルの先端からあふれ出しているものを舐めとっていき、舌先だけで根元から先端までくすぐり、更に焦らしていく。

  「んんっ!」

アルベルは甘く鼻を鳴らし、切なげに首を振る。アルベルが感じるのはアランの熱い吐息と舌先の感触だけ。手とはまた違う、舌の熱くざらりとした感触が堪らない。

  (ああ…、もっと!もっと!!)

アルベルはともすれば出てきそうになるその言葉を、必死にでてこさせまいと歯を食いしばる。アランはしばらく先端を舌先でチロチロと探っていたが、そのまま唇をかぶせ、軽く吸いながら舌を巻きつけていった。

  「な、何をッ!?」

アルベルはアランの行動に驚いて起きあがろうとしたが、アランは構わずそのままゆっくりと顔を静めていき、喉の奥にまで押し当て、舌でしっかりと締め付けた。そしてそのまま顔をゆっくりと回転させはじめた。

  「うあっ!!」

アルベルはその動きを阻止しようとするかのようにアランの頭を震える手でつかむが舌のうごめきは止まらない。アランは顔を上下させて舌と口蓋で扱き、更に手でその下の膨らみを、すぐ上から伝ってくる唾液と精でぬるぬるとなであげる。その動作は次第に激しさを増し、容赦なくアルベルを攻め立てていく。もうアルベルは恥も外聞もなく、アランの追い詰める動きにあわせて声を上げ、喘ぎ乱れていた。

  「んぁッ、あッ!はぁッ!あッ、あッ!!あぁッ!!!」

アランはぐっと顔を沈めてしっかりと舌を巻きつけ、強く吸い上げた。

  「あぁッッ!!!」

アルベルは短い悲鳴を上げ、シーツを掴んで腰を浮かし、ドクンとアランの口の中でほとばしらせた。アランは口の中でアルベルがビクビクと痙攣しているのを感じながら、更に吸い上げ、それを飲み下した。アルベルは全てを放出させると、ガックリと力尽きた。

アランはしばらくアルベルを口に含んだまま、それをじっくりと味わっていたが、やがて名残惜しみながら口を離した。アルベルのものがうなだれていき、自分の口とアルベルの先端をつないでいた銀色の糸がフツリと切れた。アランは自分の唾液で光るアルベル自身を見ながら興奮を抑えきれず、ねろりと舌なめずりをした。

アルベルはきつく目をつぶって荒い息をついていたが、アランの口中から出てきたものがひんやりと外気に晒された感触にふと見やると、アランが自分をねっとりと見つめていることに気がついた。アルベルは上気していた頬を更に赤らめ、

  「見るなっ!」

と慌ててシーツで隠した。自分の痴態にうろたえている様子。そんな初々しさに、顔が緩んでしまう。

  「そんなに恥ずかしいですか?」

その言葉にアルベルは怒りを爆発させた。ギラリとアランを睨み付けるが、頬を赤らめてそういう目つきをされても、流し目を送ってきているようにしか見えない。

  「このッ!!やられっぱなしと思うなよ!」

アルベルは起き上がって、ドンとアランの胸を押し、アランのギラギラと興奮しているものをぎゅっと握った。

  「痛い!」

とアランが痛がったので、手を緩めた。

  (痛がらせてどうする。)

と今度はやさしく撫でてみるが、

  「それでは朝までかかっても無理ですよ。」

と言われ、怒りと屈辱で真っ赤になった。

  「うるせぇッ!!」

と怒鳴りながら内心かなり焦っていた。ここまでコケにされて、だまっているわけにはいかなかった。なんとかアランの痴態もさらさせたい。

アランはアルベルがどうするのか、その様子をじっと見守っている。

  (くそッ!どうすれば…。)

アランのものを睨みつけながら考えていて、さっきの激しい快感を思い出した。

  (これしかねえな。)

アルベルはにやりとすると、ゆっくりと頭を沈めていき、アランのものに顔を近づけた。アランの内股や腹をアルベルの長い髪がさらりとくすぐる。アルベルはしばらくじっとそれに見入っていたが、やがて意を決したようにうっすらと口を開けて、更に顔を近づけていった。そしてアランが息を呑んで事態をみまもっていると、しばらくアルベルの吐息でくすぐられていた中心が、ねっとりとした暖かさにゆっくりと包まれていった。

  「!!!」

アランはあまりの事に、呆然と自分の下腹部にうずまったアルベルの頭を見下ろした。そして、ゆっくりとアルベルの髪の中に指をうずめると、ゴクリと息を呑んだ。

やはりそれを口にするのは少し抵抗があったが、それよりもやられっぱなしの悔しさと、一泡吹かせてやろうという気持ちの方が強かった。そして実際に口に含み、舌で撫でてみると、思ってもみない程なめらかで心地よいものだった。さっき自分がされたように舌を絡め、吸い上げてみると、アランはビクリと反応した。ちょっと得意になって、もっと舌を動かしてみる。

  「うぁっ!!」

アランが溜まらず声を上げた。頭上から降りかかってくるアランの喘ぎに、次第に自分も妖しげな気分になっていく。そのやり方はつたないものだったが、アランは自分のものがアルベルの口の中にあると思うだけで、あっという間に達してしまいそうだった。さすがに初めての口の中に放ってしまう訳にはいかず、奥歯をかみ締めて必死に堪える。しかしそれもそろそろ限界に近い。

  「ああっ、もうだめです!離してください。そうしないと…。」

アランは喘ぎながら懇願する。しかし、アルベルはそれに構わず更に激しく舌を動かす。

  (もっと苦しめてやる。)

倍返しだと言わんばかりに舌を絡め吸い上げた。アランの目の前に爆発寸前のスパークが巻き起こる。

  「お、お願いですっ!これっ…以上はっ!!もっ、もうっっ、我慢できなっ…っああぁっっ!!!」

アルベルはきつく吸いながら、顔をわざとゆっくり上げていき、アランの声が悲鳴を帯びたものに変わったのを聞き届けて、やっと口を離した。その途端、ぱっと白いものが口から顎にかけてたっぷりと飛び散ってきた。

アルベルは唇をなめ、それをゆっくり味わってみる。目の前には白い精をあふれさせているアランのモノ。別に嫌な感じはしなかった。


  「す、すみません!!」

アランは慌ててシーツでアルベルの顔を拭っていく。そうされながら、アルベルは、

  「どうだ?」

と勝ち誇った。

  「もう死んでしまうかと!こんなに!!…こんなに感じたのは初めてです。」

うっとりと目を潤ませながら、恥ずかしげもなくそんなことを言ってくるアランに、アルベルの方が赤面してしまう。

  「違う!!そうじゃなくて、お前は恥ずかしいとか悔しいとか思わねえのか?」

  「いいえ。アルベル様がこんなにしてくださるなんて、もう嬉しくて…」

  「もういいっ!」

アルベルは、放っておけば更に恥ずかしいことを言い出しそうなアランを遮って、プイと反対を向き、ベッドに潜り込んだ。アランはもっとやりたかったのだが、その様子をみて、仕方なく今夜はこれで諦めた。

そのまま寝ようとしていたアルベルを風呂に連れて行き、その間アランはベッドを直した。アルベルは戻ってくると、今度はベッドの端までは行かず、ちゃんとアランのスペースを空けて、残りの半分におさまった。それを見届けてからアランも風呂に行った。

湯につかりながら、ぼーっとアルベルの事を考えた。アルベルが負けず嫌いなことは知っていたが、ここまでとは思わなかった。まさか、あんなことまでしてくれるは、本当に嬉しい誤算だった。アルベルの舌の感触を思い出した息子が、また咥えられたいと身を起こしてきたので、

  (我慢しろ。)

と手をやった。アルベルの口内の熱さを思い浮かべながら…。

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■あとがき■
アルベルの負けず嫌いのお陰で、アランはい〜い思いをしました。よかったね、アラン♪
果たして、エリクールの一般家庭に風呂があるのか?→あるある!施術でお湯わかすんだよ、きっと!写真もあったしね。施術を使えば何でもあり!ってことにしておこう…。