小説☆アラアル番外編---つまらない物?レア物?(1)

  「金を掛けず、皆で盛り上がれて、尚且つ旦那の魅力を引き出す…。」

カレルはライマーの机の横に椅子を持ってきて座り、ライマーが書類整理しているのを、肘を突いてぼんやりと眺めながらつぶやいた。カレルは煮詰まるとこうしてライマーの仕事の邪魔をしに来るのだ。

カレルはため息をついて机に突っ伏した。机の面積が狭くなる。

  「こら、腕が邪魔だ。」

ライマーがカレルを突くと、カレルはしぶしぶ起き上がった。

  「旦那の魅力はそりゃ色々あるけどなー。企画にできそうなやつっつったら…お前、なんか浮かばねぇ?」

  「それはやはりあの強さだろう。」

アルベルの戦いを見ると、その凄まじさに鳥肌が立つ。

  「それは武闘会がある。他には?」

  「…舞踏会で美貌を前面にだすとしたら、あとは…律儀な面とか、か?」

  「約束は絶対守るしな。でも祭りの企画にゃならねーなー…。」

カレルは椅子の背に寄りかかって、ふむと考え込んだ。日常のアルベルを思い浮かべていく。

  「旦那って、笑うとすげえ可愛いんだよなー…。」

  「じゃあ、笑わせるか?」

カレルはガバッと身をたてにした。

  「そうだ!その線で行こう!ちょっと、紙とペン貸せ!」

カレルはライマーが握っていたペンを引っこ抜いて、近くにあった紙に猛烈なスピードで走り書きし始めた。

  「…。」

文字を書いている途中だったライマーは、諦めて別のペンを取り、カレルが陣取った分、一層狭くなってしまったスペースで、黙って作業に戻った。





アルベル不在の幹部会議で、カレルは企画をバンと提示した。

  『アルベル・ノックス団長を笑わせたら豪華賞品が貰えるよ!
  挑戦一回につき100フォル。

  〜賞品一覧〜
     大爆笑…レア物
     笑顔…いい物
     失笑以下…つまらない物 』



  「豪華賞品って、そんな予算はありませんよ。」

ユークがソロバンを鳴らしながらぴしゃりと言う。カレルはちっちっちと指を立てた。

  「金を掛けるだけが能じゃねぇ。考え方次第でいくらでも豪華になるんだ。」

  「考え方次第?例えば?」

  「そーだな、例えば俺は今、カチカチが欲しい。」

  「カチカチ?なんですかそれ?」

そう思ったのはユークだけではなかった。みんなの頭の上に?マークが浮かんでいる。

  「知らねぇの?紐の先に玉が付いてて、それをぶつけて遊ぶやつ。」

  「あー、あのカチカチですね!子供のころ遊びましたよね。」

オレストが手の動きをして見せた。

  「俺にとっちゃぁ手の届かねぇ憧れのオモチャだったがなぁ。」

家が貧しかったジノが感慨深げに言うと、カレルは俺もそうだ、と言った。そのカチカチはユークも知っていたし、遊んだこともある。けれど、

  「……そんなもん、どうするんですか?」

するとカレルは「そこだ!」と指を刺した。

  「お前にとっては価値のないもんでも、俺にとっては価値があるわけだ。それを利用する。」

カレルは命令を出した。

  「団員に賞品の募集を掛けろ。」

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■あとがき
祭り(16)の番外編です。カチカチってのはカチカチクラッカーの事です。